働く上での健康管理は、会社だけではなく社員自身も留意すべきことです。しかし長いキャリアの中では、誰しも、心身に不調が生じたりケガをしたりすることはあります。健康経営への関心が高まる一方で、休職や復職にまつわるトラブルも増えてきていますので、改めて自社のルールを確認してみることも必要でしょう。
会社は、社員に対して、医師による健康診断を実施する義務があります(労働安全衛生法)。また、社員も、会社が行なう健康診断を受診しなければなりません。
①雇入れ時健康診断(雇入れの際)
※医師による健康診断を受けた後3カ月を経過していない者を雇入れる場合は、健康診断の結果を証明する書面を会社に提出した時はその項目については健康診断を行わなくても良いとされている。
②定期健康診断(一年以内ごとに1回)
※①を受診してから一年以内であれば省略できる。
③特定業務従事者の健康診断(特定業務への配置換えの際6カ月以内ごとに一回)
④海外派遣労働者の健康診断(海外に6カ月以上派遣する際・帰国後国内業務に就かせる際)
⑤給食従業員の検便(雇入れの際・配置換えの際)
●①②③の対象となるのは、常時使用する労働者です。
また、パート・アルバイトなど短時間労働者であっても、下記の社員は対象となります。
・期間の定めのない労働契約の社員
・一週間の労働時間数が、同様の業務に従事する正社員の4分の3以上の社員
●「忙しい」「自分は大丈夫だから」等の理由をつけて健康診断を拒否する社員がたまにいますね。しかし、安全衛生法に基づき、会社には健康診断を実施する義務があり、社員にも受診する義務があります。
仮に、”本人が健診を拒否し会社も手を打たず”という状況の中で、業務中に脳血管疾患や心疾患などを発症してしまうと会社の責任が問われる可能性があります。また、本人のその後のキャリアだけでなく人生そのものにも大きな影響が出てしまいます。
就業規則の懲戒処分をしてでも健康診断を受診させる必要があると捉えて良いでしょう。
●定期健康診断の結果が会社に届いたら、異常の所見の有無に関わらず、遅滞なく結果を本人に渡さなければなりません。
また、健康診断個人票を作成し五年間保存しなければなりません。
最近は、結果を本人へ直接渡す医療機関もあり、社員が会社への提出を拒むケースもありますが、会社は、法令事項として強制的に提出させることができます。
※50人以上の労働者を雇用する事業者は、管轄する労基署長に定期健康診断結果報告書を提出しなければなりません。
「休職」にまつわる実務
●「休職」を社内規定で定めている・制度として設けている会社も多いと思います。
休職期間中は、ノーワークノーペイの原則に基づき「無給」として問題ありません。ただし、社会保険料は免除とならないため、会社負担も本人負担分も発生します。給与がゼロである以上、社会保険料の控除ができないため、毎月あるいは2~3カ月ごとなど定めて会社へ振り込んでもらうといったルールを定めておく必要があります。
社員が休職する時の対応フロー
1,就業規則の確認
2,社員との面談(状況等について聞き取り)
3,休職命令の発令を検討→発令(休職命令書)
4,休職中の取り扱い(社保料、傷病手当金など)・復職に際して等説明し、休職通知を出す
5,休職中、定期的に社員と連絡(現在の健康状態や治療の進捗状況を確認)
6,復職する場合、復職が可能と記載された診断書等の提出を指示
※復職に際しては、社員が従前の業務に従事することが前提だが、場合によっては軽易な作業に転換をさせた上でリハビリ勤務をさせるケースもある。医師の意見をもらうときは、従前の業務に復帰できるかだけでなく、どのような業務内容であれば復職が可能かについても診断書に記載してもらうと良い。
7,診断書の結果を踏まえ復職日を決定
8,医師の意見を踏まえ労働条件を検討
●いつまでも休職を認めることは現実的には難しく、一定の期間を経て回復しない場合は自然退職とする規定が一般的です。休職期間や、休職期間満了となって復帰できない場合は自然退職となることを事前に「休職命令書」で通知しておくと良いでしょう。(下記ひながた参照)
●休職は会社の業務命令によって行われるものです。社員が休職を希望している場合であっても、会社側で休職の必要性を検討した上で会社が休職を命じて休職させます。休職を発令するための条件が揃っていることを示す記録と共に、命令をしたこと自体を示す記録(休職通知)をきちんと残すことが重要です。